支援者のみなさま、いつも本当にありがとうございます。地球防衛群です。
このたび、公式サイトに新しい政策提言を公開しました。
「土と水は、誰が引き継ぐのか」
──地域食料・水循環レジリエンス構想/農地を食・水・生態系・防災の国土インフラへ戻す──
https://earth-savers.org/policy/farmland-food-water-resilience
今回の提言を作った出発点は、農村で静かに進んでいる危機です。
農業を担う方の高齢化と減少が続き、耕作されなくなる農地も増えています。
農林水産省の令和8年農業構造動態調査では、個人経営体の基幹的農業従事者は98.7万人、平均年齢は67.7歳と推計されています。また、令和6年度末の荒廃農地は25万7千ヘクタールに上ります。
数字だけを見ると、「農業者が減っている」「使われない農地が増えている」という話に見えるかもしれません。
しかし、失われようとしているのは、農産物を作る場所だけではありません。
■ 田んぼや畑は、地域を支えるインフラです
一枚の田んぼは、お米を作るだけではありません。
雨水を一時的に受け止め、地下へ水を浸透させ、生きもののすみかをつくり、地域の景観を守っています。
用水路、ため池、堰、畦畔も、長い時間をかけて地域の人たちが築き、共同で管理してきた水循環の仕組みです。
耕作する人がいなくなり、水路の泥上げや草刈り、畦の補修が続けられなくなると、影響はその農地だけにとどまりません。上流の管理が止まれば、土砂や雑草が下流へ流れ、地域全体の水の流れや防災、生態系にも影響する可能性があります。
さらに、農村で受け継がれてきたのは土地や農機だけではありません。
いつ水を入れるのか。大雨の前後にどこを見回るのか。水路に異変があったとき誰に相談するのか。どの種がその土地に合うのか。
こうした経験や地域のつながりも、担い手がいなくなれば一緒に失われてしまいます。
だから私たちは、農村の危機を、農業者だけの問題として考えてはいけないと思いました。
これは、私たちの食料、水、生態系、防災、そして地域社会をどう次の世代へ渡すかという、社会全体の問題です。
■ なぜ、今の制度だけでは支えきれないのか
現在の行政では、食料生産、農地、水利、河川、防災、生物多様性、学校給食、担い手育成などが、それぞれ別の制度、部局、予算で扱われています。
一つひとつの制度は必要なものです。
しかし、一枚の田んぼが同時に担っている「食料を作る」「水を蓄える」「地下水を育む」「生きものを守る」といった機能を、まとめて評価し、支える仕組みは十分ではありません。
その結果、地域全体に役立つ水路管理や草刈り、生態系の保全まで、現場の農業者の負担や善意に依存している地域があります。
農産物の販売価格だけで、これらすべてを支え続けてもらうことには限界があります。
そこで今回の提言では、農地を個人の生産手段としてだけでなく、食料、水循環、生態系、防災を支える「国土インフラ」として捉え直しました。
そして、農地が社会にもたらしている公共的な働きに対して、公がきちんと対価を支払う仕組みを求めています。
■ 市町村・都道府県・国、それぞれが今からできること
国の制度が変わるのを待っている間にも、農地の荒廃と担い手の引退は進みます。
そのため本提言では、まず市町村が現行制度の中で始められることから、都道府県、国へと順に対策を整理しました。
市町村には、主に次の取り組みを提案しています。
・学校、保育所、病院、福祉施設などの給食や食事で、環境や品質に配慮した農産物の継続的な需要をつくる
・農地の場所だけでなく、雨水を蓄える働き、地下水、10年後の耕作見込みなどを把握する「農地インフラ台帳」を作る
・水路管理、田んぼダム、生態系保全、災害時の協力など、農地の公共的な働きに対価を支払う
・農業機械や作業受託を地域で共有し、一人ひとりの農業者に大きな負担を背負わせない
・農地、技術、水利の決まり、種、顧客、収支まで含めた承継計画を作り、農業を次の世代が「継げる仕事」に変える
都道府県には、市町村の境界を越えて流れる水を「流域」という単位で捉え、農地、水路、森林、生態系をつなぐ調整役となることを求めています。地域の在来種を守る仕組みや、広域備蓄、市町村間の連携も必要です。
国には、農地の雨水貯留、地下水涵養、生物多様性、食料供給、担い手への継承を共通の目標として制度に組み込み、公共的な働きへの支払いを「農業への付加的な支援」ではなく「公共サービスへの対価」として位置づけることを提案しています。
■ 農家を「継いでほしい」と言うだけでは守れません
農村を残すために必要なのは、家業だから継ぐべきだと次の世代へ求めることではありません。
農業が、家族を養い、休みを取り、技術を学び、将来の見通しを持てる仕事でなければ、UターンもIターンも続きません。
農地を引き継ぐと同時に、多額の借入れや無償の地域作業まで背負わせるのではなく、公共調達、所得の下支え、公共機能への対価、共同農機、有給での研修、住居や子育て支援を一体で考える必要があります。
子どもたちに残すものを、借金と義務ではなく、選べる仕事と続けられる地域へ変えていく。
それが、本提言で大切にした考え方です。
■ 100年先を予測するのではなく、次の世代へ責任を持つ
この提言では、政策を考える時間軸を100年に置いています。
100年後の社会を正確に予測できるという意味ではありません。
土は、失われれば短期間では元に戻りません。水路やため池、地域に合った種、水を分け合う知恵も、一度途切れれば簡単には再生できません。
だからこそ、担い手がまだ地域にいる今のうちに、何を、誰に、どのような状態で渡すのかを決める必要があります。
100年を20年ずつの5期に分け、その時代の担い手が検証し、前提から見直していく。未来を固定するのではなく、次の世代が選び直せる土、水、種、仕組みを残すための提言です。
■ ぜひ、提言をご覧ください
農村の危機は、農村だけの問題ではありません。
私たちが毎日食べるもの、使う水、災害への備え、生きものの環境、そして地域のつながりに関わる問題です。
提言の全文では、海外制度との比較、有機農業への移行、冬期湛水、農業者の所得を支える方法、制度を実施するときの課題まで詳しく整理しています。
「土と水は、誰が引き継ぐのか」
https://earth-savers.org/policy/farmland-food-water-resilience
皆さまからいただいたご支援があったからこそ、現場の課題を調べ、資料を読み、こうした提言として社会へ公開することができています。
改めまして、本当にありがとうございます。
これからも、七世代先の子どもたちへ水と森、土と種を引き継ぐために、必要な仕組みを一つずつ提案していきます。
引き続き、地球防衛群の活動をあたたかく見守っていただけますと幸いです。
地球防衛群
小野
※本提言は政策上の選択肢を示す一般的な提案です。特定の地域・事業・契約等に関する法的助言、税務助言、投資助言または行政判断を代替するものではありません。制度の導入・適用にあたっては、関係法令、自治体の規則、財政、地域条件等の個別確認が必要です。