この活動報告で、私たちが、熊本地震レスキュー活動で出会った猫達のお話をしていきたいと思います。
今回は、宇土市で出会った一匹の老猫りんちゃんのお話です。
宇土市の地域包括支援センターから、V-CATS JAPANへ相談が入りました。
飼い主さまは、88歳。
大きな地震でご自身が負傷され、入院。
これまでと同じ暮らしを続けることが難しくなり、今後、施設へ入居される可能性があるとのことでした。

そのお家には、20年以上、飼い主さまと一緒に生きてきた猫がいました。
名前は、りんちゃん。
20歳から21歳になる、とても高齢の猫です。
震災さえなければ、今日もいつもの場所で
ご親族やご近所の皆さまと話し合いを重ね、私たちもご自宅へ伺いました。
初めて会ったりんちゃんは、とても20歳を超えているとは思えないほど元気でした。

ご飯もしっかり食べていました。
ただ、爪は長く伸び、ひどい巻き爪になっていました。
震災さえなければ。
飼い主さまが怪我をしなければ。
今日もきっと、いつものお家で、いつもの人のそばで、いつものように過ごしていたはずです。

飼い主さまが、りんちゃんと離れたかったわけではありません。
りんちゃんを手放したかったわけでもありません。
地震によって、それまで当たり前だった暮らしを続けられなくなってしまったのです。
誰が悪いわけでもない。
それでも、家族は離れ離れにならなければならない。
災害は、そんなあまりにもつらい選択を、人にも猫にも突きつけます。
今回は正式に書類を交わし、まずは一時預かりとして、V-CATS JAPANがりんちゃんお預かりすることになりました。
「りんちゃん、元気でね」
りんちゃんがお家を離れる日。
これまで、りんちゃんを気にかけ、お世話をしてくださっていたご近所の皆さまが集まってくださいました。
「りんちゃん、元気でね」
「長生きするんだよ」
皆さまが、何度も、何度も声をかけます。
20年以上、この町で生きてきたりんちゃん。
りんちゃんには、どうして今日、長く暮らした家を離れるのか。
どうして、いつもの人と離れなければならないのか。
きっと、わからなかったと思います。

涙を浮かべながら、りんちゃんの姿が見えなくなるまで見送る皆さま。
その姿を見て、私たちも涙をこらえることができませんでした。
大切にされてきたんだね。
ずっと、愛されてきたんだね。
その愛情も、皆さまの「元気でね」という願いも、全部一緒に連れていこう。
そう思いながら、りんちゃんをお預かりしました。
高齢のりんちゃんが、穏やかに過ごせるように
20歳を超えるりんちゃんにとって、たくさんの猫がいるシェルターへの移動や、急激な環境の変化は、大きな負担になります。
そのため現在は、V-CATS BASEのメンバーが滞在する宿で、静かに、ゆっくり過ごしてもらっています。

「もう大丈夫だよ」
「ここで、ゆっくりしていいからね」
ご飯を食べているか。
きちんと眠れているか。
排泄に変化はないか。
痛そうな様子はないか。
小さな変化を見逃さないよう、毎日見守っています。
20年以上、一生懸命に生きてきたりんちゃん。
突然、住み慣れた家を離れることになったけれど、これからの時間も、安心して穏やかに過ごしてほしい。
そう願っています。
被災したのは、人だけではありません
人の暮らしが変われば、家族として生きてきた猫たちの暮らしも、大きく変わります。
震災によって飼い主さまと暮らせなくなった猫。
家が壊れ、帰る場所を失った猫。
驚いて外へ飛び出し、行方不明になった猫。
保護されても、まだ飼い主さまが見つかっていない猫。
今も、私たちのもとには、守らなければならない命があります。

だから私たちは、「保護できた」で終わりにはしたくありません。
安心して眠れる場所をつくる。
必要な獣医療を届ける。
毎日のご飯と、清潔な環境を守る。
その子の体調や性格に寄り添う。
そして、その命を、その先の幸せまでつないでいく。
それが、V-CATS JAPANの役目です。
現在、V-CATS JAPANは被災地で、迷子猫の捜索・保護、獣医療支援、支援物資の配布、行き場を失った猫の一時預かりを行っています。
飼い主さまと再び暮らせる猫は、家族のもとへ。
飼い主さまのもとへ戻ることが難しい猫は、その子を生涯大切にしてくださる新しい家族へ。もし、譲渡ができなければ、私たちが一生涯責任をもってお世話をする覚悟で保護をしています。
捜索、保護、医療、預かり、返還、そして必要に応じた譲渡まで。
それぞれの専門チームが連携し、一匹一匹の命に責任を持って活動しています。
皆さまのご支援が、りんちゃんの安心につながっています
能登半島地震のときから、私たちは多くの猫と、そのご家族に向き合ってきました。
そして熊本でも、今なお支援を必要としている猫たちがいます。

この活動を続けられるのは、支えてくださる皆さまがいるからです。
皆さまから託していただくご支援が、猫たちの毎日のご飯になります。
必要な医療になります。
安心して眠れる居場所になります。
現場へ向かうための力になり、次の一匹を救う力になります。
震災によって失われたものを、すべて元に戻すことはできません。
でも、その先にある命と未来は、みんなで守ることができます。
りんちゃん。
あなたを涙で送り出してくれた人たちの想いも。
あなたのこれからを応援してくださる皆さまの想いも。
全部、丸ごと背負って、私たちはあなたを守り続けるよ。
もう大丈夫。
これからは、私たちみんなで見守っていくからね。
被災した猫たちの命と、その先の猫生を守るための資金が必要なのです。
一匹でも多くの命を、その先の幸せへつなぐために。
引き続き、温かいご支援と応援を、どうぞよろしくお願いいたします。
ご支援が難しい場合も、この活動報告を周りの方へ伝えていただくことが、大きな力になります。